発見!まるごと津軽の風物詩

第3回 由緒ある神社で レンコン掘って30年 (2008/06/13)
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取材日: 4月30日(水) ・ 5月27日(金)   青森県平川市


青森県平川市にある「猿賀神社(さるかじんじゃ)」は蝦夷討伐のために北上した坂上田村麻呂が延暦12年(793年)に創建したと伝えられ、江戸時代には津軽藩の祈願所とされた、伝統ある神社です。その猿賀神社の境内には「鏡ケ池(かがみがいけ)」と「見晴ケ池(みはるがいけ)」という二つの池があるのですが、そのうち「鏡ヶ池」には和蓮が自生しています。
夏には池一面を覆いつくす勢いで見事な和蓮の花が咲く鏡ヶ池ですが、春には「レンコン(蓮根)掘り」が行われます。(夏の鏡ヶ池の様子は…こちらから!

取材@:4月30日(水)
4月30日(水)にスタッフKが猿賀神社を訪れると、「鏡ヶ池」に小舟が一艘浮かんでいました。長さ約2メートル×幅約90センチほどでしょうか、小舟の上には男性が一人乗っていました。

男性は舟底に腹ばいになって顔を水面に付きそうなほど近づけ両腕を池の中に伸ばし、しばらく探る様子の後、池から引き出した手には市販のものより細身のレンコンがありました。
そのレンコンをかたわらに置くと、休むことなく再び池に手を伸ばし黙々と同じ作業を繰り返していました。しばらくすると起き上がり舟を移動させて、舟を止めるとそこでも再び黙々と同じ作業。

池の周りには桜が咲き、あたたかな風が吹く穏やかな春の日だったのですが、その男性は水面に散った桜の花びらも気にしない様子で、静かにレンコンを掘り続けていました。


取材A:5月13日(火)
数日後、ひたむきにレンコン堀りをしていた男性の姿が忘れられなかったスタッフK、その男性にぜひ話を聞いてみたいと思い立ち、1か月ほどの間続けられるとの情報を得て再び猿賀神社へ行ってみました。
猿賀神社を訪れるのが2度目となった5月13日(火)、鏡ヶ池に向かったところレンコン堀りは行われていませんでした。
社務所で話を聞いたところ、レンコン堀りは氏子の方がご自分の仕事の合間を見て行っているため、いつ行われるか事前には分らないとのこと。あの男性と話してみたい、でも予定が分らないと難しいかな、と悩んだスタッフKに社務所の女性が助け舟を出してくれました。「レンコン掘りにいらしたら、お電話しましょうか?」と。


取材B:5月27日(火)
2週間後の5月27日(火)、「今年最後のレンコンを掘りに、本日作業に見えられましたよ。」との社務所からの電話を受け、猿賀神社へ。この日は今にも雨が降り出しそうな曇り空で気温も低く肌寒い日だったのですが、鏡ヶ池では4月30日と同じく小舟に乗って黙々と作業する男性がいました。

今日も鏡ヶ池に浮かんでいるのは一艘の舟だけ。
黙々と掘る作業を繰り返し、ある程度レンコンが溜まってきたら舟の上で身を起こし、レンコンについた泥や根を除いてきれいにし、舟の後ろのほうに重ねていきます。その作業がひと段落着くと、再び舟に腹ばいになって池の中に腕を伸ばし、レンコンを探していきます。




静かに真剣に作業を繰り返す姿に声を掛けるのがためらわれましたが、思い切って話しかけてみると、とても気さくに笑顔で応えてくれました。ということで、「発見!まるごと津軽の風物詩」コーナー始まって以来、初のインタビューです!
答えてくれたのは、レンコン堀りを始めて30年のベテラン、清藤清春さん(せいとうきよはるさん・60歳)です。



―― 清藤さんがレンコン堀りを始めたきっかけは?
清藤さん 祖父がこの神社にお仕えしていたから、小さい頃からここ(猿賀神社)が遊び場だったんだよ。昔はおやつなんてそんなになかったから、ここの(鏡ヶ池に自生している)レンコンを掘って食べたりしてね。だから大きくなった時に誘われて、私は農家なんだけど、ちょうど4月半ばから5月半ばくらいの空いている時間を利用してできる、ちょっとしたアルバイト感覚で始めたんだよ。もう30年続けているね。
―― 清藤さんしか見かけたことがないんですが、お一人で作業されてるんですか?
清藤さん 始めた頃は先輩方と3人でやってたんだけど、今は私一人だよ。一人で作業するようになって数年経つかなあ。若い人も何人か来たことがあるんだけど、続かなかったなあ。
―― 若い人は、どうして続かなかったんでしょう?
清藤さん 春先の水はまだ冷たいし重労働だから、なかなか大変なんだよ。それに、最初から誰でもすぐにたくさん収穫できるわけじゃないんだ。コツが要るから、経験とかが大事な作業なんだ。だから、なかなか面白みも湧かないんじゃないかな。
―― レンコン堀りって、大変なんですね。コツが要るんですか?
清藤さん そうなんだよ。池の水の下で、レンコンは真っ直ぐに生えているわけじゃない。斜めに生えているものもあれば、数本のレンコンが重なり合ったりして生えているから、見つけても力任せに引っ張るとレンコンが途中で折れてしまうんだ。そもそも、レンコンが池に均等に生えているわけじゃなくて、生えているポイントがあるからね、やみくもに手を池に入れたところで、簡単に見つけられる訳じゃないんだよ。
―― 奥が深いんですね・・・。
清藤さん レンコン掘りは大体4月半ばくらいから1か月くらいかけてやるんだけど、5月も末になると今度はレンコンから新しいレンコンが生えてきたりして、掘るのがもっと難しくなる。レンコン自体も固くなるしね。若い人(後継者)も出てくれば嬉しいけど、難しいんだよ。
―― 今年はいつから始められたんですか?
清藤さん 今年は4月16日から始めて、今日が最後だよ。だいたい1回2〜3時間くらいかかるね。4月半ばの作業し始めの頃は少し池の水が少ないんだけど、5月になると田んぼに水を入れたりする関係で池の水位が上がるから、少し作業が大変になってくるんだ。
―― ところで、この掘ったレンコンってどうなるんですか?
清藤さん 神社の神事に奉納したり祭祀奉仕者の食事になったりするね。それから、地元のお菓子屋さんが作ってる「蓮根羊羹」と「蓮根最中」にも使われているよ。ここのレンコンは細身だけどシャキシャキして美味しいんだよ。

急なインタビューのお願いにも嫌な顔をせず快諾してくださり、にこやかに答えてくれた清藤さん。言葉の端はしから、またその表情から、自分の慣れ親しんだ猿賀神社を心から大切にしている気持ちが伝わって来ました。根気のいる作業にも黙々と真剣に取り組んでいる姿は、まさに強くてたくましい「津軽のとっちゃ」そのもの。いつまでも元気で続けて欲しいものです。

猿賀神社のある旧尾上町は、立派な蔵と庭(つぼ)を持つ家が多いことで有名です。また、生垣で敷地を囲んだりする家も多いんですよ。これは、旧尾上町が農業とともに造園業も盛んなためと言われていますが、造園業以外の方の庭や生垣も見事なものなんです。重労働の農作業を終えて帰宅した夕方、縁側で涼みながら風情あるきれいな庭を眺めて癒される農家・・・ちょっと素敵じゃないですか!?
私なんかは「農作業の他に庭木の手入れもするのは大変じゃないのかな〜?」と思ってしまうのですが、農家のとっちゃ達にはそれもまた大事な楽しみなんですよね。

そんな旧尾上町にある猿賀神社では、毎年春(4月下旬〜5月上旬:ちょうどゴールデンウィーク頃)に「花と植木まつり」が開催されます。尾上植木問屋協会協会員の皆さんが自慢の植木や花を提供しており、その場で買い求めることが出来ます。神社の桜もちょうど咲いているこの時期、桜だけではなくこちらの「花と植木まつり」の見ごたえも十分なので、買い求める方以外にも目の保養にいらしてる方も多くいらっしゃるんですよ。

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